夕日に染まって
買物袋を両手に下げて
部屋のドアを蹴飛ばす
隅のホコリが舞い上がる
日はすでに傾いて
ベランダでは洗濯物が
夕日に染まってはためく
もうエネルギーは残っていない
残の表示が赤になって
忙しく点滅をしている
猫の手!
よりもましな
ル・・・・・・
ほら、噂に聞いたお掃除ロボット
ル・・・何とか言ったが
ぬるま湯の日々にふやけた頭では
すぐには思い出せない
ねぇ、あなたは融通がきくの?
隅までできる?
すき間は大丈夫?
落ちたピアスと綿ぼこりの違いを
即座に判断できる?
ねぇ、従順な石頭のロボット君
この賢いロボットは
平和な居間を彷徨うために
わざわざ開発されたのではないと知って
思考は青ざめて立ち尽くす
その進化の過程を遡ると
舞い上がる部屋の埃さえ
平和の象徴に見えてくる
「一億個の地雷に向かって
戦え!
探して、破壊せよ」
と、
遠いどこかの国の
ピアスも綿ぼこりも落ちていない荒野で
土埃にまみれて
ベランダでは洗濯物がゆれて
居間が夕日に染まっていく
紅い爆風が
頬をかすめる
遠いどこかの国の
寒々しい荒野とダブるが
すぐに消えていった
平和にどっぷりと浸かった頭には
居間と荒野の距離さえつかめな
知らないだけで
すぐそこかも知れない
夕闇に舞うホコリに感謝しつつ
by kk_wako
| 2014-03-09 15:27
| 詩